地方エンジニアの重要性が高まる?IT業界の構造課題と、国内分散型チームという選択

アルサーガパートナーズは、コンサルティングからシステム開発、保守・運用までを一貫して担うDXソリューション事業を展開し、業界・業種を問わずさまざまな課題解決に取り組んでいます。同時に、社会課題や技術の最前線に向き合いながら、これからの働き方や組織のあり方についても探究を続けてきました。
「Arsagaの最前線」は、そうしたアルサーガパートナーズの取り組みと、各分野に精通した社員の知見をもとに、社会とテクノロジーの“今”を紐解く連載です。第一回となる今回は、アルサーガパートナーズが長年力を入れてきた「ニアショア体制の強化と地方エンジニアの育成」をテーマに、その背景と可能性を掘り下げます。
テクノロジーの進化によって、働く場所の制約は確実に小さくなりました。それにもかかわらず、IT業界ではいまも「人材」「拠点」「成長機会」が都市部に集中し続けています。
人材不足が叫ばれ、採用競争が激化する中で、企業は本当に最適な場所で、最適なチームをつくれているのでしょうか。
近年、こうした問いへのひとつの答えとして注目されているのが「地方拠点」という選択です。単なるコスト調整やリモートワークの延長ではなく、IT業界が抱える構造課題そのものを見直す動きとして、静かに広がり始めています。
本記事では、なぜ今、地方拠点が注目されているのか。その背景にある業界構造と、国内分散型チームが持つ可能性についてひも解いていきます。
都市集中と人材不足。IT業界が抱える構造的な課題

都市部に偏る就業機会と生活コストの上昇
これまでIT業界は、東京を中心とした大都市圏に拠点を集約してきました。ビジネス機会や情報、人材が集まりやすいという合理性があったからです。
一方で、その集中は別の問題も生み出しています。家賃や交通費、保育費など、都市部で働くための生活コストは年々上昇し、「働くこと自体の負担」が増大しています。
とりわけ若手人材にとって、都市部での生活はキャリア形成以前に生活の安定を脅かす要因になりつつあります。都市で働くことが前提である限り、IT業界は自ら人材の間口を狭めているとも言える状況です。
慢性的なIT人材不足と、採用難の現状
IT人材の不足は、長年にわたり業界の大きな課題とされてきました。経済産業省の試算によれば、現時点でも約17万人が不足している状況にあり、この数は2020年に約37万人、そして2030年には最大で約79万人にまで拡大すると見込まれています。

出典:みずほ情報総研株式会社(経済産業省委託事業)「IT 人材需給に関する調査」
技術革新のスピードに対して、育成と確保のスピードが追いついていないのです。特に都市部では企業同士の採用競争が激化し、スキルの高いエンジニアを確保することが難しくなっています。
企業にとって「人材は資産」であるにもかかわらず、採用活動が都市圏に限定されているため、視野が狭まり、結果として機会損失を生んでいるケースも少なくありません。
また、地方出身者の中には「地元で働きたい」という希望を持つ人もいます。にもかかわらず、そうした人材にアプローチできない状況が続けば、業界全体の人材流動性にも悪影響を及ぼしかねません。
在宅勤務の普及が変えた「働く場所」の概念
2020年以降、在宅勤務やリモートワークは一気に広がりました。多くのIT業務が、物理的な出社を前提とせずに遂行できることが明らかになったのです。
この変化は、「働く=会社に行く」という長年の前提を大きく揺さぶりました。働く場所は、もはや成果を左右する本質的な条件ではありません。
この意識の転換こそが、地方拠点という選択肢を現実的なものにしています。
なぜ地方拠点が注目されるのか?
人材確保と地域活性化の相乗効果
地方拠点がもたらす最大の価値は、人材の選択肢を広げられる点にあります。UターンやIターンを希望する人材、地元での就職を望む学生にとって、地方拠点は新たなキャリアの受け皿となります。
同時に、企業が地域に根ざすことで雇用が生まれ、経済が循環し、地域活性化にもつながります。企業と地域が一方的な関係ではなく、共に成長する関係を築ける点も見逃せません。
多様な働き方を実現するローカル環境の魅力
地方での暮らしは、都市部と比べて生活コストが抑えられ、自然や家族との時間を確保しやすい環境が整っています。通勤に追われることなく、仕事に集中できる環境は、ワークライフバランスの向上にも直結します。
こうした環境で働けることは、企業にとっても人材の定着や成長につながる重要な要素です。

国内分散型チームの強みとは?オフショア開発と比較
地方拠点を活用した開発体制は、しばしばオフショア開発(海外委託)と比較されます。しかし、国内分散型チームには、明確な強みがあります。
- 時差のないコミュニケーション
国内拠点であれば時差は存在しません。確認や相談が即座に行え、仕様変更にも柔軟に対応できます。スピードが求められる現場において、この差は非常に大きな意味を持ちます。
- 言語・文化を共有したチーム運営
共通の言語や文化的背景を持つことで、細かなニュアンスまで含めた意思疎通が可能になります。認識のズレによる手戻りが少なく、チームとしての一体感も生まれやすくなります。
- 国内IT人材の育成という視点
海外委託に依存しすぎると、国内で経験を積む機会が失われてしまいます。国内分散型チームは、若手エンジニアが成長する場を国内に残し、技術の継承を支える役割も担います。
地方拠点は“特別な選択肢”ではなくなる?
成功事例から見える共通点
すでに地方拠点を積極的に展開している企業の多くは、ある共通点を持っています。それは、単に「地方でコストを抑えたい」という理由ではなく、「そこで暮らす人と、真剣に向き合う姿勢」を持っているということです。
たとえば、地元の大学や専門学校と連携して育成から採用までを一貫して行ったり、自治体や地域団体と協力して暮らしやすい環境づくりを支援したり。単なる労働力の確保ではなく、「人と地域に根ざす」という考え方が、長期的な成功につながっています。
一方的に業務を持ち込むのではなく、地域の中にしっかりと入り込み、共に歩む姿勢が問われているのです。
専門家からのコメント
アルサーガパートナーズ 副社長 松濤 徹
日本のIT産業は長らく大都市集中モデルに依存してきましたが、2030年には最大約79万人の人材不足が予測される中、その構造的限界を迎えています。こうした閉塞感を打破する鍵として、地方拠点を核とした「教育共創」と「国内分散型開発」が注目されています。
先行事例では、独自の成功モデルが確立されています。徳島県神山町では、IT企業のサテライトオフィス進出を起点に、2023年には起業家精神を育む「神山まるごと高専」が開校し、産業と教育が一体化したエコシステムが誕生しました。兵庫県淡路島では、パソナグループが本部機能を移転し、地域課題をITで解決する「アジャイルな地域貢献」を実践しています。また、島根県松江市はプログラミング言語「Ruby」を核としたブランド化に成功し、福岡市は「エンジニアフレンドリーシティ」として、高い生活の質(QOL)を背景に優秀なエンジニアを惹きつけています。
これらの事例に共通するのは、地方を単なる低コストな労働力の供給源と捉えるのではなく、地域コミュニティへ統合し、自律的な成長を促すプラットフォームを構築している点です。
こうした潮流の中、アルサーガパートナーズもまた、福岡、熊本、鹿児島に拠点を設け、九州地区の優秀な人材を仲間に加える土壌を育てています。熊本拠点をリードする弊社取締役の渡邉は熊本高専卒の起業家で、まさにアントレプレナー先行事例の一人としてこの世界観を体現しています。
弊社の取り組みを通じて、現地の金融機関や企業、そしてそこで働く地域の経営者の皆様/ビジネスパーソンから多大な支持と支援を頂いている実感があります。日本経済新聞九州版(2025年1月10日付)などの地元メディアからも応援を頂けるようになり、一つ一つの拠点が地域にとってなくてはならない「地域本店」としての魅力を着実に発揮し始めています。
私たちは、この強い手応えを自信に変え、さらなる地域の拡大を目指します。地方を「周辺」ではなく、新たな価値創造の「中心」へと再定義し、日本の各地域で働く人々に、心から熱狂できるプロジェクトを届け続けてまいります。
アルサーガパートナーズ 取締役副社長
報道関係者の皆様へ
アルサーガパートナーズでは、社会課題の解決や最先端のIT・AI技術、お客様のDX推進に向け、日々研究と挑戦を重ねております。
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