新春特別対談!大手SI出身エグゼクティブ×当社CTOが語る、AI時代を生き抜くための“本質”

新年あけましておめでとうございます。今回の「人をつくるアルサーガ。」第137回は、新春にふさわしい技術と経営の「頂上対談」をお届けします。
大手SIer・メガベンチャー・外資系企業という日本ITの主要三極全てで活躍してきたエグゼクティブ・フェロー、高岡さん。そして、アルサーガの技術を統べる会長兼CTO、小俣。
現場のリアリティと経営のロジック、その双方を極めた「最高技術者」クラスの頭脳が、AI時代に企業が生き残るための戦略、これからの経営者に求められる姿勢、そして技術者キャリアの未来について、徹底討論します。
2026年、企業はどこへ向かうべきか。技術者のキャリアはどう変わるのか。現場と経営の両方を知る数少ないトップ人材が語る洞察は、社会のリーダーたちにとって確かな道しるべとなるはずです。
エグゼクティブ・フェロー高岡 将について

第一生命情報システムにて、大規模システムの開発・運用に従事。
その後、2005年にレコチョク、2008年にDeNA、2010年にクルーズとベンチャーにてコンテンツや配信、ECなどのインフラ開発を経験。
2012年に日本マイクロソフト、2015年にAWS両社共にエバンジェリストとしてクラウド技術の普及に貢献。
2016年にはリクルートテクノロジーズでSRE組織の立ち上げやネットインフラ刷新を主導。
2019年よりNTTデータ先端技術の執行役員として、セキュリティ、テクノロジーコンサルティング部門を率い、クラウドシステムやICT基盤の設計・導入支援、セキュリティガバナンス強化やインシデント対応支援を担当。
2025年、アルサーガパートナーズのエグゼクティブ・フェローに就任。
<著書>
・おうちで学べる仮想化のきほん(翔泳社)
・エバンジェリストの知識と経験を1冊にまとめた AWS開発を《成功》させる技術(SBクリエイティブ)など
テクノロジーDDのプロが見た、アルサーガの価値とは
――本日はありがとうございます。まず、高岡さんが多彩なキャリアを経て、なぜ今、アルサーガへの参画を決められたのかについて、教えてください。
高岡:きっかけは、泰明さんがSNSで「サクラステージに移転した」と投稿していたのを見たことでした。その投稿に反応したところ「遊びに来てよ」と声をかけてもらい、久しぶりの再会が実現したんです。
振り返れば、その再会が自分にとって大きな転機になりました。もしこの先、私がアルサーガの成長や上場に貢献できたとすれば、間違いなく「サクラステージ」という場所が起点だったと言えるでしょう。

――大手SIerやメガベンチャーを経験してきた中で、アルサーガのどこに魅力を感じたのでしょうか。
高岡:まず、客観的な視点でお話します。私はこれまで、企業買収のテクノロジーデューデリジェンスにも関わってきました。その観点でアルサーガを見ると、将来の出口戦略の幅が非常に広いという確信がありました。端的に言えば、「マイナスにならない賭けなら乗っておくべき」という感覚に近いですね。
小俣:アルサーガは、大手企業の皆さまと協働しながら、資本を“より強固なパートナーシップを築くための架け橋”として活用しています。資金調達という枠を超えて、互いの強みを掛け合わせて新しい価値を創出する。資本関係をそのための基盤として位置づけている点は、アルサーガならではの強みですね。
高岡:加えて個人的な観点では、「組織の柔軟性」に魅力を感じました。大規模なSIerはどうしてもプロセスが複雑で、挑戦したいことがすぐに実現できない場面が少なくありません。その点、アルサーガは優秀なメンバーが揃っていながらも意思決定が速く、“やりたいことをすぐに形にできる場所”だと感じたことが、参画を決めた最大の理由です。
日本のIT業界が抱える「国民性」という課題
――大企業とベンチャーの両方を経験してきた高岡さんから見て、日本のITに欠けているものは何だと考えていますか?
高岡:課題は技術力そのものというよりも、日本人の国民性に起因する部分が大きいと感じています。たとえばアメリカでは、要件定義やRFPが完璧でなくても、とにかくAIやクラウドをどんどん投入して成果を出すという文化が根付いています。
一方で日本はまだ、生成AIの導入に関してもLLMやRAGの議論段階に留まり、実装に踏み切れていない状況です。「石橋を叩き割って、結局渡れない」という表現が近いでしょうか。検討に時間をかけすぎてしまう傾向が強いです。
――そのスピードの差を埋めるにはどうすべきでしょうか。
高岡:私も泰明さん(小俣)も、結局は泥臭く自分で手を動かし、顧客に寄り添い、証明しながらファンを増やすアプローチを取っています。今の時代はお客様自身の情報感度も上がっているので、「誰がアンテナを張っているのか」を見ています。だからこそ、相手に合わせてスタイルを柔軟に変える可変性も、エンジニアやリーダーに求められる重要な資質だと感じています。

AI時代、エンジニアの「魂」はどこに宿るのか
――生成AIがコードを書く時代。エンジニアが生き残るために必要なスキルとは何でしょうか?
高岡:究極的には、「お客様をどれだけ愛せるか」です。技術とは、使う相手がいて初めて価値を持つものです。AIがコードを書く時代になっても、“どの課題を解決すべきか”という本質的な問いは、依然として人間にしか立てられません。
実装のアイデアも設計思想も、すべてはお客様の課題に対する深い理解と洞察から生まれます。だからこそ、AI時代はむしろ顧客課題の解像度を上げられるエンジニアが強くなると考えています。
――では、真の「AIエンジニア」とはどんな人物でしょうか?
小俣:単にGoogle検索をChatGPTに置き換えるだけでは“AIエンジニア”とは呼べません。真に価値を出すAIエンジニアとは、たとえば従来1ヶ月かかっていた作業を、AIを駆使して1日で終わらせるような、「破壊的な価値」を生み出せる人です。
そのためには、AIツールを正しく使いこなす知識や、プロンプト設計を含むワークフロー全体の設計をする力が欠かせません。そして、AI時代にこそ重要になるのが「泥臭いインフラの仕事」です。複数人でAIを業務活用する環境では、生成物のバージョン管理やプロンプトの再利用、ナレッジ共有などが崩壊しがちです。従来のBPOやRPAのように、業務統制までをAIでコントロールできる能力こそが、これからのAIエンジニアに求められると考えています。

SREとセキュリティ、経営者が投資すべき「守り」の技術
――高岡さんはSRE(Site Reliability Engineering)やセキュリティ領域のプロフェッショナルです。これら「守りの技術」への投資を、経営の視点ではどのように捉えるべきでしょうか?
高岡:セキュリティは正直なところ、投資判断が非常に難しい領域です。「何も起こらなければ無駄な投資、何かが起こった時に何もしていなかったら大惨事。」そのバランスをどう取るかで悩まれるお客様は、本当に多いと感じています。
――その判断の難しさに対し、どう寄り添うべきでしょうか?
高岡:セキュリティ担当者は他社の状況を知る機会が少なく、孤独になりがちな職種です。一方で、私たちはさまざまな企業の事例や、同業他社の規模に応じた予算・体制を横断的に把握しています。その知見を活かして「この会社にはこのレベルの対策が最適です」と現実的なラインを提示することができます。セキュリティ対策は、お客様の立場に寄り添いながら、最適なバランスを一緒に見つける伴走型の仕事だと考えています。
――SREについては、どのようなビジネスインパクトがありますか?
高岡:SREは「信頼性の継続的な向上」をミッションに掲げる技術領域です。単なる障害対応ではなく、システムの構造的な非効率を見つけて改善する役割を担います。
過去にSREチームを立ち上げた際、まず巨大なWebサービスのアクセスログを分析しました。すると、最も多かったのが「300番台(リダイレクト)」でした。これは、SEO目的でGoogleの検索順位が変わるのを避けるため、古いページを残したまま大量のリダイレクトを発生させていたことが原因です。
次に多かったのは「400番台(クライアントエラー)」でした。調べてみると、透明画像でよく使われる「spacer.gif」のような不要なリクエストが大量発生していたのです。これを解消しただけで、専用線の帯域を約10Gbpsも削減できました。システムの背景まで理解したインフラ担当者が入ることで、サービス改善とコスト最適化の両方を実現できる。これこそSREの本質的な価値だと考えています。

――それは驚異的な成果ですね。大企業は意思決定に時間がかかると言われます。SREやセキュリティの取り組みも同じでしょうか?
高岡:まさにその通りで、SREやセキュリティの取り組みも、大企業では意思決定のスピードに大きく影響されます。特に守りの領域は目に見える売上につながりにくいため、投資判断の優先度が上がりにくい傾向があります。
さらに、大企業は新しい技術や運用プロセスを導入する際の入り口が限られており、承認プロセスが非常に重い。たとえば、「面白そうだから、明日からDatabricksを試してみよう」と思っても、翌日からPoCを始められるようなスピード感はなかなかありません。
意思決定のスピードが早い企業ほど、改善サイクルを素早く回し、お客様の変化にも対応できます。そういう意味で、アルサーガのスピード感は大きな強みであり、私自身もそこに期待しています。
技術から経営へ。高岡氏が語る、エンジニアキャリアの可能性
小俣:高岡さんは技術領域のプロフェッショナルでありながら、現在は営業戦略や経営戦略、そしてM&A戦略まで幅広く携わっていますよね。技術畑の人間がそこまで深く経営にコミットする必要性はどこにありますか?
高岡:技術の知識を持つ人間が行き着く先のひとつは、実装にとどまらず、経営レベルの意思決定に関わることだと感じています。技術者は単なる“作り手”ではなく、技術を使って会社全体の価値をどう高めるかまで責任を持つ存在になるべきだと思うんです。
小俣:つまり、技術者にも実装だけでなく、企業の出口戦略までを見据えた俯瞰的な視点が求められる時代になっているということですね。

高岡:まさにその通りです。実装がAIによって効率化されるほど、技術者の価値はその知識をもとに、企業の成長戦略やビジネス拡大をどうデザインできるかに移っていきます。営業戦略や経営戦略、そしてM&A戦略まで踏み込んで考えることこそ、技術者が発揮できる次の役割だと考えています。
――技術者が経営の最上流に立つことで、日本のIT業界にどのようなインパクトを与えたいと考えていますか?
高岡:技術者が経営の最上流に立つ意義は、技術を“実装の手段”としてではなく、企業の仕組みそのものを変革する力として活かせる点にあります。技術を理解した上で経営判断を行うことで、事業モデルの設計や価値創出の方法そのものを刷新し、企業の成長を一段引き上げることができます。
私たちが社内に新しい動きや成功パターンを作り出せれば、その変化は必ず外へ波及し、日本のIT業界にも大きなインパクトを与えます。技術の力でビジネスの進め方を再定義し、業界に新しい基準をつくっていく。その“変革の楔”を打ち込むことこそ、今の私たちに求められている役割だと考えています。
AI時代を勝ち抜くために企業が持つべき姿勢とは
――AI時代の中で、企業が未来を切り開くために、最も重視すべき考え方は何でしょうか?
高岡:私がまず大切にすべきだと考えているのは、どんな技術やスピードよりも優先される「顧客へのコミットメント」です。関心の中心に据えるべきものは常に「お客様」と「その課題をどう解決するか」。技術やスキルは後から高められますが、この姿勢だけは代替がききません。繰り返しになりますが、最終的に問われるのは、「お客様を本気で愛しているか」という一点だと思います。
その上で、このコミットメントを現実の行動に落とし込むためには、特に二つのポイントが重要です。
一つ目は、「スピードよりも、まず打席に立つこと」です。AIもクラウドも、議論しているだけでは何も変わりません。小さな検証でも良いので、まずは自分の手で試してみること。泥臭く仮説検証を積み重ね、その知見を周囲に共有していく。“どれだけ試したか”という量の差が、2026年には企業の明暗を分けると考えています。
二つ目は、「自社の中から新しいインパクトを起こし続けること」です。これは、どちらかと言うと私自身の目標に近いのですが、社内で新しい発見や成功体験を積み重ねることが、結果的に市場へ大きな波を生みます。アルサーガで新しい仕組みを根づかせ、確かな成果を出すことができれば、その動きは必ず日本のIT業界にも広がっていく。そう信じて、これからも挑戦を続けたいと思います。
――ありがとうございました!

(取材・編集・文=広報室 宮崎)