
DXコラム
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ソフトウェア開発やシステム運用の現場でよく耳にする「DevOps」と「アジャイル」という言葉。どちらも開発効率を高めたり、組織の生産性を向上させたりすることを目的として使われますが、その意味や役割は異なります。
この2つの手法には共通点もありますが、目指している方向性や導入される範囲には明確な違いがあります。たとえば、「アジャイル」は小さなチーム内で素早くソフトウェアを開発するための手法であるのに対し、「DevOps」はその開発されたソフトウェアを安定的に運用・リリースしていくことに重きを置いています。
この記事では、DevOpsとアジャイル、それぞれの特徴を押さえながら、どう異なるのかをわかりやすく解説していきます。はじめに概要を整理したうえで、具体的な違いや両方をうまく取り入れる方法まで紹介していきますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
開発や運用に関わる人なら一度は耳にしたことがある「DevOps」と「アジャイル」。まずはこの2つの言葉が何を指しているのか、ざっくりと整理してみましょう。
アジャイルは、「小さく作って、すばやく改善する」という考え方に基づいたソフトウェア開発の手法です。一度にすべてを作り上げるのではなく、機能を少しずつ実装しては、実際に動かして確認し、必要に応じて調整を重ねていきます。
このような進め方は「スプリント」と呼ばれる短い開発サイクルを基本にしています。1〜2週間単位で動くソフトウェアを作ってリリースし、それに対するユーザーやステークホルダーの反応をもとに次の開発につなげていくのです。
代表的なフレームワークには「スクラム」や「カンバン」があり、いずれもチーム内のコミュニケーションや柔軟な対応力を重視しているのが特徴です。つまり、アジャイルは「不確実な状況の中でも、変化に強く、価値あるものを届け続ける」ことを目的とした開発手法といえます。
一方、DevOpsは「開発(Development)」と「運用(Operations)」の協力関係を意味する言葉で、単なる開発手法ではありません。開発したソフトウェアを、素早く、かつ安定的にリリースし、現場に届けるための一連の流れや仕組みを指します。
たとえば、開発チームが新しい機能を作っても、それが運用環境でうまく動かなければ意味がありません。DevOpsでは、そのギャップを埋めるために、開発と運用が一体となって作業を進めていきます。
特に重要とされているのが「CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)」と呼ばれる自動化の仕組みです。これにより、コードの変更を即座にビルド・テスト・デプロイできるようになり、開発から本番リリースまでのスピードと信頼性が飛躍的に高まります。
つまりDevOpsは、アジャイルで素早く開発したソフトウェアを、円滑に現場へ届けるための“橋渡し役”のような存在でもあるのです。
DevOpsとアジャイルは、どちらもソフトウェア開発の効率化を目指している点では共通していますが、その役割や導入のされ方には明確な違いがあります。ここでは主に「フォーカス」「導入範囲」「ツールや文化」という3つの観点から、両者の違いを整理してみましょう。
アジャイルは主に「開発プロセス」に焦点を当てています。小さな単位でソフトウェアを作り、頻繁にテストやフィードバックを繰り返しながら、価値ある機能を素早く届けるための仕組みです。その中心には、「どう作るか」「どの順番でリリースするか」といった開発チーム内での意思決定があります。
一方、DevOpsは「開発と運用のコラボレーション」に重きを置いています。開発側がソフトウェアを作り、運用側がそれを安定的にリリース・管理するという流れの中で、互いの壁を取り払い、継続的な改善と連携を可能にするための文化と実践が求められます。
つまり、アジャイルは「開発の中でどう価値を生み出すか」、DevOpsは「その価値をどう届けていくか」にフォーカスしていると言えるでしょう。
アジャイルは基本的に、開発チーム内で完結する考え方です。特にユーザーストーリーやスプリントレビューなどは、プロジェクト単位での改善サイクルを回すための手法であり、チームの規模が小さくても機能します。
一方のDevOpsは、開発チームだけでなく、運用やセキュリティ、インフラチームなど、より広範な組織単位での連携が前提となります。そのため、導入する際には社内の文化やワークフローそのものを見直す必要があることも少なくありません。
このように、アジャイルは「チームに最適化された開発手法」、DevOpsは「組織横断の連携と自動化の枠組み」として位置づけることができます。
アジャイルはどちらかというと「方法論」に重きを置いており、スクラムやカンバンなどの明確なルールやフレームワークがあります。これは開発プロセスの透明性や効率性を高めるために有効です。
一方でDevOpsは、CI/CDツール、インフラ自動化ツール(Ansible、Terraformなど)、モニタリングツール(Prometheus、Grafanaなど)といった、技術的な基盤と切り離せない存在です。どちらかといえば、ツールを活用しながら文化や組織のあり方を変えていく、という実践的なアプローチが中心となっています。
そのため「どんなツールを使って、どう連携し、どこを自動化するか」という具体的な設計が、DevOpsではより重要になります。
観点 | アジャイル (Agile) | DevOps |
---|---|---|
フォーカス | 開発プロセスに焦点を当て、短いサイクルで価値ある機能を届ける | 開発と運用のコラボレーションに焦点を当て、価値を継続的にユーザーに届ける |
導入範囲 | 主に開発チーム内で完結。小規模チームでも導入しやすい | 組織全体にまたがる連携が前提。運用・セキュリティ・インフラまで含む |
ツール・文化 | スクラムやカンバンなど方法論・フレームワーク中心 | CI/CD、インフラ自動化、モニタリングなどのツール+文化変革が不可欠 |
DevOpsとアジャイルにはそれぞれ異なる役割がありますが、実はこの2つを組み合わせることで、開発から運用までの一連の流れをよりスムーズに進められるようになります。それぞれの強みを活かしながら、より高品質でスピーディなソフトウェア提供が可能になるのです。
アジャイルによって、開発チームは短期間で価値のあるソフトウェアをリリースし続ける体制を整えられます。しかしその成果物をユーザーの手元に届けるためには、安定したリリース体制や障害への即応性が必要です。ここで役に立つのがDevOpsの考え方です。
DevOpsでは、開発で生まれた価値を「いかに早く」「安全に」届けるかを重視しています。CI/CDの導入やモニタリングの仕組みを整えることで、アジャイルがもたらすスピード感を損なうことなく、運用フェーズへと自然に引き渡すことができます。
つまり、アジャイルが「開発を加速させるエンジン」だとすれば、DevOpsは「そのエンジンを滑らかに走らせるオイル」のような存在です。両者は対立するものではなく、むしろ互いに支え合うことで真価を発揮する関係なのです。
実際、多くの企業ではアジャイルとDevOpsの両方を導入し、その相乗効果によって成果を上げています。たとえば、あるIT企業ではアジャイル開発で頻繁に機能改善を進める一方、DevOpsの体制によって1日に何十回もの自動デプロイを可能にしています。
このように、アジャイルがもたらす迅速なフィードバックループと、DevOpsによる安定した運用基盤がかけ合わされることで、ユーザー満足度の向上や開発チームの負荷軽減につながっているのです。
導入の際は、まずアジャイル的な開発プロセスをチーム内で整え、その後に自動化ツールやCI/CDの仕組みを整備していく、という段階的な進め方も効果的です。
DevOpsとアジャイル。この2つの手法はどちらも、より良いソフトウェアを、より速く、安定して提供するための考え方ですが、そのアプローチや目的は異なります。
アジャイルは「どのようにソフトウェアを開発するか」に焦点を当てた手法であり、変化に素早く対応できる開発プロセスを実現します。一方のDevOpsは、「そのソフトウェアをどうやって安全に届け、運用していくか」に重きを置いた文化や仕組みです。
つまり、アジャイルが“価値をつくる仕組み”であれば、DevOpsは“価値を届けるための土台”。両者は相反するものではなく、むしろ連携することで、開発から運用までの一連の流れをシームレスに整えることができるのです。
自社の課題や開発体制に応じて、アジャイルから取り入れるのか、DevOpsの自動化から始めるのか、そのアプローチはさまざまです。大切なのは、それぞれの特徴を理解したうえで、状況に応じた最適な選択をしていくことです。
まずはチームで話し合い、小さな一歩からでも取り入れてみてはいかがでしょうか。
(文=広報室 白石)