
DXコラム
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生成AIの登場によって、プログラミングの世界は急速に変化しつつあります。かつては専門知識がなければ手を出しにくかったコーディング作業も、AIのサポートを受けることで格段にスムーズになりました。
関数作成やAPI連携、繰り返し処理などの定型作業は、AIを使えばほんの数秒で完成することもあり、初心者でも学びながら効率的にコードを書ける環境が整いつつあります。また、経験豊富なエンジニアにとっても、AIによる補助は作業のスピードを飛躍的に高め、より高度な設計や創造的な開発に集中できる余地を生み出しています。
このように、生成AIは単に「コードを書く手間を減らすツール」にとどまらず、「プログラミングの学び方や開発の進め方そのもの」を再定義する存在となりつつあります。
この記事では、生成AIがプログラミングの現場にどのような影響を与え、初心者からプロまでどのように活用できるのかを、具体例を交えながらわかりやすく解説していきます。
目次
「生成AI」という言葉を耳にする機会が増えましたが、これは単なる文章作成ツールではありません。 ChatGPTをはじめとする最新のAIは、画像や音声、そしてプログラミングコードまでも自動生成できるまでに進化しています。
もともとは自然言語を理解し、文章を出力するAIとして開発されましたが、そこに「パターン認識」や「推論」の技術が加わることで、AIは人間の思考に近い形で出力を行えるようになりました。
その結果、文章の執筆はもちろん、ソースコードの提案や修正、テストコードの作成まで、広範囲な業務をAIが担う時代に突入しているのです。
プログラミングにおいて、生成AIが注目されるのには理由があります。
一つは「作業の効率化」です。コードの雛形や繰り返し処理を、AIが即座に提示してくれることで、手間が大幅に削減されます。
もう一つは「初心者の学習ハードルが下がること」。わからないことがあれば、AIに質問すればその場でコード付きで解説してくれる。従来は「検索して、ドキュメントを読み込んで試す」という流れが当たり前でしたが、今では対話しながらプログラミングを学べる環境が整っています。
これらの要素が重なり、生成AIはプログラミング学習者にも、現役エンジニアにも、欠かせないツールになりつつあるのです。
生成AIの中でも特に大きなインパクトを与えているのが「コード生成機能」です。たとえば、関数のテンプレートやAPIの呼び出し方、繰り返し処理の書き方など、定型的なコードをAIが一瞬でつくってくれるようになりました。これまで、1つの関数を書くのに10分かかっていた作業が、AIの補助を使えば数十秒で完了することも珍しくありません。
もちろん、人間の手で細かく調整する必要はありますが、それでも「ゼロから書く手間」が減るだけで、作業効率は格段に上がります。特に、膨大なコードを扱うプロジェクトでは、こうした時短効果がそのまま生産性向上に直結するため、開発チームにとっては非常にありがたい存在となっています。
プログラミングをしていると、どうしても避けられないのが「バグ」や「エラー」の発生です。しかし、生成AIの活用により、このエラー対応の手間も軽減されつつあります。
たとえば、エラーの原因がよくわからないとき、AIにエラーメッセージを貼り付けて相談すると、考えられる原因と修正例を提示してくれます。また、複雑に絡み合ったコードを整理する「リファクタリング」も、AIが提案してくれるため、効率的かつ安全にコードを改善できるようになりました。
こうした使い方は、初学者はもちろんのこと、経験豊富なエンジニアにとっても大きな支えとなるでしょう。
さらに注目すべきは、「非エンジニアでもAIを活用して簡単なアプリやツールをつくれる時代が来た」という点です。
たとえば、Webサイトの見た目を少し変更したい場合や、簡単な計算ツールをつくりたいとき、今なら、生成AIに「こういうのを作りたい」と伝えるだけで、HTMLやJavaScriptのコードを出力してくれます。細かい調整は必要ですが、コーディングの知識があまりない人でも、試行錯誤しながらツールをつくれる環境が整ってきたのです。
これは、これまで開発に手が出せなかった人々にとって、まさに“創造の扉”が開かれたような変化とも言えるでしょう。
プログラミングで活用できるAIツールには、コード補完やバグ修正、リファクタリングなど、さまざまな支援機能があります。
ここでは、実際に利用しやすく、初心者から経験者まで効率的に開発を進められる代表的なツールを紹介します。
GitHub Copilotは、MicrosoftとOpenAIが共同開発したコード生成AIです。Visual Studio Codeなどのエディタに組み込むことで、リアルタイムでコードの提案や補完を行ってくれます。
たとえば、関数名を入力しただけで、その機能に合ったコード全体を自動生成してくれるなど、まるでペアプログラマーのような働きをしてくれます。タイピングの途中で候補が表示されるため、プログラミングに慣れていない人でも直感的にコーディングを進めることができる点が魅力です。
もちろん、完璧なコードを生成するわけではありませんが、たたき台としては非常に優秀で、コーディング速度の向上に大きく貢献しています。
対話型AIであるChatGPT(OpenAI)やClaude(Anthropic)は、自然言語による指示を理解し、コードの出力や修正提案をしてくれるツールです。プログラミングに特化したエディタではなく、チャット形式でやり取りできるため、初心者でも気軽に相談できるのが特徴です。
たとえば、「JavaScriptでタイマー機能をつくりたい」と入力するだけで、必要なコードを提示してくれます。さらに、生成されたコードの意味や使い方まで丁寧に解説してくれることも多いため、学習にも非常に役立ちます。
また、AIは日本語での質問にも対応しているので、英語に自信がない人でも安心して利用できる点もポイントです。
Cursorは、Visual Studio Codeに似た操作性を持つAI特化型エディタです。エディタ内でコードを直接編集しながら、会話形式でリファクタリングやバグ修正を依頼できる点が特徴です。
GitHub Copilotのようにコード補完を行いながら、ChatGPTのように自然言語で指示を出せるため、まるで「ペアプログラマー以上」のサポートを受けているかのような体験が得られます。特に大規模なコード修正やプロジェクト全体の改善を効率化したい場合に、その強みを発揮します。
Visual Studio Code(VS Code)は、プログラマーに広く利用されているテキストエディタですが、生成AI関連の拡張機能を導入することで、さらに開発効率を高めることができます。
たとえば、Amazon CodeWhispererを使えば、高精度なコード補完に加え、セキュリティチェックや修正提案を自動で行えます。また、WindsurfはVS Code拡張としても利用できますが、独立したエディタ版も提供されており、コード生成やリファクタリング、会話型サポートといった幅広いAI支援を受けられます。さらに、ChatGPTを統合する拡張機能を利用すれば、エディタ上でAIに質問したり、コードレビューを依頼したりしながら開発を進めることも可能です。
ツールごとに対応言語や得意分野は異なるため、自分の開発スタイルや目的に合わせて選ぶのがおすすめです。
生成AIは非常に便利なツールですが、すべてを鵜呑みにしてしまうのは危険です。特にプログラミングでは、「それっぽく見えるコード」が実際には意図通りに動かないことも少なくありません。
AIが提案するコードの中には、エラーを含んでいたり、セキュリティ面で不十分な実装になっていたりすることもあります。そのため、出力されたコードは必ず自分の目で確認し、テスト環境で動作を検証することが大切です。
便利さを享受するためには、「AIが書いたから正しい」という思い込みを捨てることも必要なのかもしれません。
生成AIは、過去に学習した膨大なコードをもとに出力を行っています。そのため、AIが生成したコードの中には、著作権のあるコードに似た内容が含まれている可能性もあると指摘されています。
商用利用する場合やオープンソースとして公開する場合には、出力されたコードの出典やライセンスに注意が必要です。特に企業での利用時には、法務部門との連携や使用ルールの明確化を進めておくと安心です。
AIがコードを迅速に書いてくれる時代になったからこそ、私たち自身の「学びの姿勢」が問われています。すべてAI任せにしてしまうと、自分で考える力やエラーを解決する力が育ちにくくなることもあります。
AIを「便利な先生」として使いながらも、自分で理解しようとする努力を怠らないこと。そして、わからない部分をAIに聞いて学ぶ「問いの力」を育てることが、これからの時代には求められていくのかもしれません。
今後のプログラマーには、コードを“書ける”能力だけでなく、AIを“使いこなす”スキルも必要になってきます。
生成AIは、あくまでツールです。その出力をうまく活用し、自分の作業効率やコードの品質を高めることができるかどうかが問われます。たとえば、指示の出し方ひとつでAIの出力内容が大きく変わるため、「どのように質問するか」「どこまで細かく指定するか」といったスキルが重要になります。こうした“AIとの対話力”が、新たな開発スキルとして注目されつつあるのです。
生成AIがコードを書くとしても、「どんな機能を、どのように実現するのか」という設計の部分は人間に委ねられています。そのため、今後のプログラマーには、全体を見通す論理的な思考力と、設計力がますます求められるでしょう。
たとえば、要件を整理して、必要な処理を細かく分解し、それをどのような順序でAIに伝えるか。そうした“段取り力”が開発の質を左右します。コードを書くことよりも、「考えること」が仕事の中心になるかもしれませんね。
最後に大切なのが、「AIは敵ではなく、仲間である」という意識です。
生成AIの登場により、「人間の仕事が奪われるのでは」と不安を感じる人もいますが、実際には“補助役”としての側面が強く、私たちの作業を支えてくれる存在です。AIをうまく活用すれば、単純作業にかける時間を減らし、本来の創造的な仕事に集中できるようになります。つまり、「AIと一緒に開発する」というスタンスが、これからの時代においては重要になっていくのです。
生成AIの進化によって、プログラミングの世界は確実に変わり始めています。
これまでエンジニアにとっては避けられない手間だった「コードを書く」という作業が、今ではAIの支援を受けながら、より効率的かつ柔軟に行えるようになりました。
初心者にとっては、AIが“学習のパートナー”となり、難しい概念も会話を通じて理解できるようになる。 一方、経験者にとっては、AIが“開発のサポート役”となり、作業のスピードと質を同時に向上させてくれる存在になりつつあります。
しかし、AIに頼りきりにならず、自分自身のスキルや判断力を磨くことも忘れてはいけません。AIを“使う側”として主体的に取り組む姿勢が、これからの時代に求められる真のエンジニア像といえるでしょう。
生成AIは、プログラマーの仕事を奪う存在ではなく、可能性を広げてくれるパートナー。その波に乗れるかどうかが、これからの技術者としての成長を大きく左右するのかもしれませんね。
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(文=広報室 尹)